八坂 由美
この本は著者の八坂さんがミクロネシアへ協力隊員として派遣された時の話をまとめたものです。南洋の楽園というイメージしかないミクロネシアにもカースト制度のようなものがあるなど、今まで知らなかったことが沢山書かれていてびっくりするなど、八坂さんの好奇心が生き生きとミクロネシアの様子を描き出していると思いました。非常に読みやすく、読んでいて楽しくなる本です。
そして、「面白いなあ」と思ったもう一つの点は、例えば例えば本書のサブタイトルにもなっている「初めてのテレビニュース」を作ろうという目標を立て、日程まで作ったのに、何事もまったく計画どおりには行かずにずるずると予定が遅れていくくだりです。
最初著者は何らかのゴールを設定して、そのゴールに至ることを目的に、職場の同僚たちを動かそうとしていたように見えるのですが、次第にミクロネシアの時間の中で、予測できない状況の中を泳ぎながら少しずつ進んでいこう、というように変わってきたように見えました。自分ひとりで気張って計画していた「プロジェクト」が、次第にミクロネシアの人たちの、日本人からしたらゆっくりとしたようにも見える「プロセス」に飲み込まれていったように思えます。
著者の八坂さんとは何度もメールのやり取りをしたことがありますが、実際にお会いしたのは一度だけです。この本から受ける印象よりも一層さわやか、そして温かみを感じさせる人でした。