日経BP社から出ている「養老孟司のデジタル昆虫図鑑」は、養老孟司さんが日本や海外で集めた昆虫標本を紹介すると共に、ヒゲボソゾウムシという目立たない虫の仲間を切り口に、生物の多様性や、それに対する人間の無関心とかを浮き彫りにしていく、という構成になっています。最初から最後まで昆虫図鑑として構成されているわけではありません。
その意味では、昆虫図鑑としては中途半端、かつ、書籍として読むにもコンテンツが不足、という結果に終わっていることは否めないと思います。装丁もしっかりしていて写真もきれいな本ですから、養老孟司の世界に触れたい人が手元に置いておくには良いかもしれません。
さて、書評としては少々不満が残る本ではありますが、写真の美しさは文句なし。小さな昆虫の隅々まできれいに撮影されています。
秘密はスキャナー。昆虫写真というと、どうしても一眼レフカメラにマクロレンズを付けた、クローズアップ撮影、いわゆる接写を思い浮かべがちですが、実は被写界深度が深いスキャナーを使用すると、かなり高精度で、光もきれいに回り込んだマクロ写真が撮影できます。
もちろん屋外で生きた昆虫の写真を撮影する、となると、スキャナーでは不可能ですが、養老先生のように昆虫標本、つまり動かないものを撮影するとなると、スキャナーが力を発揮します。
僕自身もオオクワガタのTシャツは、オオクワガタ(もちろん生きていない)をスキャナーでスキャンして作成しています。ヘラクレスオオカブトは収まりが悪いのでカメラで撮影しましたが…
僕もスキャナーの機能に注目して、トンボ玉博物館ブログでも紹介しましたが、古いトンボ玉をスキャナーで撮影して楽しんでいます。スキャナーのこうした使い方はあまり知られていませんが、もっと注目されても良いはず。ちなみにトンボ玉写真のサンプルはこちらを参照してください。facebookにアップした写真をご覧いただけます。
スキャナーにはその構造から2種類があります。CCDタイプと、CISタイプですが、昆虫やトンボ玉などの立体的なものの撮影にはCCDタイプのスキャナーが必要です。CISタイプは価格も安く、コンパクトで手軽ですが、被写界深度が浅く、書類のスキャンには向いていますが、立体物のスキャンには適していません。